事務所だより 平成29年8月号
職場の安全衛生管理 【安全衛生・健康管理のチェック】 産業医による過重労働者の面接指導 ?!
過重労働者の面接指導を実施することとなった背景には、うつ病や過労自殺、年々増加する30~50代の脳卒中発症などの病気を予防することが目的とされています。
特に、過重労働による健康障害を防止するためには、その原因と認められる働き方を見直す必要があるのですが、これを社内の人間だけで進めようとしても「きっかけづくり」からして困難です。そこで、社員の心身の状態を産業医に診断してもらうことにより、必要がある場合には、「就業制限」等を医学的な見地から、強制的に行わせることになりました。
実際に、過重労働者面談の対象となった社員の中には、うつ状態に陥っている者の割合が一般の社員よりも相当多く、放置したままにしておくと病状が進行し、治療のために数か月間の休職を余儀なくされることになりかねないという報告もあります。
いわゆる過重労働者とは「休憩時間を除き1週間当たり40時間を越えて労働させた場合におけるその超えた時間が1ヶ月あたり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者。」とされています。(労働安全衛生法第66条の8及び労働安全衛生規則第52条の2)。
※ 過重労働者については、遅滞なく産業医による面接指導を行うことが会社に義務付けられています。また、1ヶ月80時間を超えた者についても産業医の面接指導を行うことが努力義務として定められています。
企業では、産業医による過重労働者の面接指導対象者の基準を、1ヶ月100時間を超えた者は直ちに、1ヶ月80時間を超えた者は2ヶ月連続して80時間を越えたとき、としている例が多いようです。
※ 「疲労の蓄積が認められる者」の判定についての明確な基準は示されていません。そこで、面談対象者を判定するために「疲労蓄積度チェックシート」(厚労省推奨)を利用するのも方法の一つです。
社員の安心感 ⇔ 会社に対する信頼感
産業医の面接指導を行う目的は、社員が健康を害することのないように、産業医の診断を受けて、早期発見・早期治療、働き方の見直しをすることです。
したがって、面接指導対象者の基準を設けるに当たっては、費用のことも考えなければなりませんが、法令の基準にこだわることなく、会社としては健康にも安全にも気配りをしていること、そして元気で長くこの会社で仕事をしてほしいというメッセージを社員に対して発信することのできる基準とすることが望まれます。
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