労務相談事例集

弊所に寄せられたご相談をピックアップしました。弊所に寄せられたご相談をピックアップしました。
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製造業(2019年3月)

質問

残業を命じた従業員から、「締結した36協定の労働者代表者が退職しているので、協定は無効だ。残業させるならば、新たに代表者を選出して36協定を締結し直す必要がある。今は36協定がない状態なので、残業命令に従う必要はない」と言われました。
本当に残業をやらせてはならないのでしょうか。

回答

ご相談につきましては、「届出されている有効な36協定があること」、「届出され周知されている有効な就業規則があること」、「就業規則に、時間外労働を命じることができること、正当な理由なくして命令を拒否できないことが規定されていること」が整っているのであれば、適法に残業を命じることができます。
36協定、または就業規則のいずれかだけでは適法な残業を命じることができませんので注意してください。

36協定の効力要件
「事業場の労働者の過半数を代表する【※過半数代表者の選任が妥当でない場合は協定無効】」という協定当事者の要件は、協定成立時の要件であり、協定の存続要件ではありません。したがって、成立後に代表者が退職しても36協定の効力には影響しません。

残業命令の根拠
時間外労働を命じることができる根拠は、就業規則、または労働契約に、一定の業務上の事由があれば労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨が定められていることにあります。したがって、就業規則にその旨の規定があるならば時間外労働を命じることができます。

残業命令拒否に対する懲戒
残業命令の拒否は労働契約上の義務違反ということになり、懲戒処分の対処になります。
しかし、労基法第36条に基づく時間外・休日労働は、同法第32条の例外として許容しているものですから、通常の労働時間に対する義務とは性格を異にするものです。したがって、懲戒処分としての種類は、それ相当に軽微なものでなければならない、と解されています。

介護施設運営(2019年2月)

質問

労働基準法が改正されましたが、それぞれの施行期日とその罰則を教えてください。

回答

改正条項のほとんどが平成31年4月1日からの施行となり、罰則は適用されるものとされないものがあります。

●3ヶ月フレックスタイム制
 施行期日 平成31年4月1日
 罰  則 労使協定の届出違反 30万円以下の罰金

●時間外労働の上限規制に係る規定
 施行期日 平成31年4月1日
 罰  則 上限時間(80時間、100時間)違反 
 6ヶ月以下の懲役又は30円以下の罰金
 経過措置 中小事業主は平成32年4月1日から適用
 適用除外 新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務
 適用猶予 工作物の建設等の事業、自動車の運転の業務、医業に従事する医師等
 ※平成36年4月1日から適用

●年次有給休暇
 施行期日 平成31年4月1日
 罰  則 年5日以上取得させなかった使用者に対して、対象1名につき30万円以下の罰金

●割増賃金率の適用
 施行期日 中小事業主は平成 35 年4月1日から適用
 罰  則 6ヶ月以下の懲役又は30円以下の罰金

●労働基準法施行規則の見直し
 施行期日 平成31年4月1日
  ⑴ 労働条件の明示    → 真実を明示すること
  ⑵ 労働条件の明示の方法 → 希望によりmail可
  ⑶ 過半数代表者関係   → 民主的な選出に限る

青果販売業(2019年1月)

質問

弊社では、新卒採用は行わず、通年採用のみです。
そのため、年次有給休暇の起算日が個人ごとに異なりますので、4月1日を統一付与日としています。
さて、この4月から1年間に5日の年休の付与が義務づけられることになりますが、弊社の場合、年5日とはどこの1年を考えればよいのでしょうか。

回答

A氏は6ヶ月経過後の10月1日に10日の年休が発生し、通常は翌年の10月1日に2回目の11日が発生することになります。
しかし、御社では4月1日を統一起算日としているので、10月からは6ヶ月しか経過していませんが翌年の4月1日には1年間が経過したものとして2回目11日が発生することになります。
ご質問の5日付与する1年間の期間の起算となる日は、10日以上の年休が新たに発生した日が基準日になりますので翌年の10月1日が第一基準日となります。そして、この第一基準日から1年以内の4月1日を統一起算日としていますので、新たに年休が発生する翌年の4月1日(統一処理日)が第二基準日となります。
御社のように、年休の存続期間が重複する場合については、第一基準日から起算して、第二基準日から1年間が経過する日(翌々年の3月31日)までの期間で考えて、その期間中に1年当たり5日に相当する日数を取得させなければなりません。
この場合の計算方法は、入社年の10月1日から翌々年の3月31日までは18ヶ月ですので、この月数を12で除した数に5を乗じた日数を、18ヶ月の間に時季を指定して取得させることになります。
(18月÷12月)× 5日 ≒ 8日

なお、時季を定めるにあたっては、労働者の意見を聴かなければならないことされています。また、「年次有給休暇管理簿」の作成とこれを満了後3年間保存しなければならないことされました
平成31年4月1日施行

輸入販売業(2018年12月)

質問

労働基準監督署の調査があり、是正勧告書でいくつかの指摘を受けました。
その中の一つに、法令上保管義務のある労務関係の書類が保存されていないという項目がありました。
労務関係書類については、それぞれ作成しているのですが、処理が終わったものや退職者のものは、必要ないと思い、1年ほどで処分していました。
ちょうどよい機会なので、それぞれの書類の正しい保管期間を教えてください。

回答

労働基準法109条には、『使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。』と定められています。
この規定は、労働者の権利と労働に関する紛争の解決と監督官が調査する上での必要性から使用者の義務として定められているものです。
なお、保存すべき期間の計算についての起算日は次のとおりです。【労働基準法施行規則第56条】
① 労働者名簿については、労働者の死亡、退職又は  
解雇の日から、
② 賃金台帳については、最後の記入をした日から、
③ 雇入れ又は退職に関する書類(雇入れ通知書、解
雇予告通知書、その他解雇に関する書類)につい 
ては、労働者の退職又は死亡の日から、
④ 災害補償に関する書類(災害補償及び賃金に関す
る書類、業務災害等の災害に関する書類等)につ
いては、災害補償を終った日から、
⑤ 年次有給休暇管理簿については、当該有給休暇期
間の満了日から。(平成31年4月1日施行)
⑥ 賃金その他労働関係に関する重要な書類について
は、その完結の日から
(注)「その他労働関係に関する重要な書類」とは、使用者が自ら始業・終業時刻を記録したもの、タイムカード等の記録、残業命令書及びその報告書並びに労働者が自ら労働時間を記録した報告書、法36条の規定による労使協定書、各種許認可に係る書類、労働の対償として使用者が労働者に支払ったすべてのものに関する書類等をいいます。
また、保存方法については、労働基準監督署の臨検時等、保存文書の閲覧、提出等に直ちに対応できるシステムになっていて、画像情報の安全性の確保、正確性かつ長期間にわたって復元できる等の要件を充たしていれば電子媒体に保存することも認められています。

小売業(平成30年11月)

質問

コンビニエンスストアを経営しており、人手が足りなくなる夕方や夜間のシフトに高校三年生に入ってもらえないかと考えています。
入学試験などはあるでしょうが、授業はなくなるとのことですので、毎日でなくとも都合がつく日に来てもらえるようなシフトを組めば良いかと思っています。
とりあえず春休み頃までのアルバイトで採用するつもりですが、何か注意しなければならないことはありますでしょうか?

回答

高校生も労働基準法の適用がある労働者になりますが、満18歳未満の「年少者」にあたる場合は、特別な制限があります。
◆労働者に対し当然のこと
・労働条件の明示【労働基準法第15条】
「労働条件通知書」を渡す
・賃金支払いのルール【労働基準法第24条】
「毎月1回以上」、「決まった日に」、「通貨で」、「全額を」、「直接本人に支払う」
・最低賃金以上【最低賃金法第4条】
◆高校生に関する注意事項
・高校生の勤務禁止時間【労働基準法第61条】
午後10時から翌午前5時までの間は、働かせてはなりません。18歳の誕生日を過ぎていれば、法律的には問題がないとしても夜間業務は校則違反になる可能性があります。高校生を夜間シフトに入れる時は、本人が学校から許可を得ているかどうかを確認した方がよいでしょう。
・労働契約【労働基準法第58条】
契約は、本人と締結すること。たとえ親であっても本人以外の者と結ぶことはできません。
・年齢証明書【労働基準法第57条】
18歳未満の場合は、年齢を証明する書類を店舗に備え付けなければなりません。
学生証や保険証は法律上、年齢証明書類とは認められていません。最近ではプライバシーの観点や管理のしやすさから、行政が住民票記載事項証明書を勧めています。

被服販売業(平成30年10月)

質問

当社では、採用内定者全員(4月1日入社予定)に対して、3月下旬に3日程研修を実施することにしています。
この研修では、入社後の諸注意やビジネスマナーなどを説明するほか、社内各部署での実践的な業務経験をさせることを予定しています。
任意参加としていますが、入社後の仕事に関係することも多いので、過去ほとんどの内定者が参加している実績があります。
しかし、任意の研修ですので賃金を支払う予定はありませんが、昨今のニュース等により不安なところもあります。
注意すべき点がありましたら教えてください。

回答

入社前における内定者と会社の法律関係は、昭和54年最高裁判決により「入社前の内定者と会社の間では労働契約自体は成立していますが、指揮命令をすることはできない」と解されています。
また、入社前研修への参加義務については、平成17年東京地裁判決は、「本来は入社後に業務として行われるべき入社日前の研修等を業務命令として命ずる根拠はない」とし、会社が内定者に対して入社前研修への参加を求める場合には、あくまで『内定者の同意』が必要であり、参加を強制することはできないと結論づけています。
さて、労働時間ついては、一般的に使用者の指揮命令下にあって、労務提供のため現実に拘束されている時間のことをいいます。そして、教育(研修)に参加する時間については、「就業規則上の制裁等の不利益取り扱いによる出席の強制がなく、自由参加のものであれば、時間外労働にはならない。」とする通達があります。
御社の内定者研修について、内定者研修が自由参加であり、参加しないことについて何ら不利益が及ぶことはないということであれば、労働時間とはなりません。
しかしながら、研修内容をみると入社後に行うべき業務研修の性格が強いこと、不参加のときは理由を書いた届出書を求めるなどの手続を求める場合には、自由参加であるとしても業務命令として参加が義務付けられている研修であると評価され、労働時間となることもあります。
研修の内容、実施方法などを具体的に整理して、3日間の短期の労働契約が必要になるかどうかを検討されることをお勧めします。

運送業(平成30年9月)

質問

2日前に、社員が2tトラックで荷物を配送中に、ハンドル操作を誤り、車をガードレールにぶつけてしまいました。
幸いにも事故そのものはボディーをこすった程度で済みましたが、事故の原因を聞いたところ、運転中にスマホをいじっていたとのことでした。
運転中のスマホの操作は禁止していますので、ペナルティの意味も込めて修理費用の全額を請求しようと思っていますが、問題はありますでしょうか?

回答

修理費用を請求することはできますが、費用の全額を請求することは適切ではありません。
民法上、労働者が業務上の過失で会社に損害を与えた場合は、会社に対して賠償責任があります。
しかし、裁判例では、会社側にも安全配慮義務があることや、会社の指揮命令により業務を遂行し、その労働によって使用者が経済的利益を得ていますので、その過程で生じた過失による損害のすべてを労働者の責任とするのはあまりにも不均衡であるとされています。このことから、労働者の責任に関しては、その一部に制限する考え方が一般的です。なお、会社の車にかけられている損害保険から補てんされる額については、原則として請求できないと解されています。
次に、ペナルティであるということを前面に出すと就業規則に懲戒規定や減給制裁の規定を定めていることが必要になります。また、減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない(労基法91条)とされていますので、全額を請求すると、この限度を超えることが考えられます。

労働基準法では、使用者の労働者に対する賠償予定の禁止が定められています(労基法16条)が、これは損害賠償に係る金額を予定することを禁止するものであり、現実に生じた損害について賠償請求することを禁止するものではありません【昭22.9.13 発基17号】。

本件は、社員と十分に話し合い、事故の原因、事故歴、社内での前例などを踏まえて、納得性のある損害賠償額を示すことが重要になります。そして、常日頃、交通ルールを守り、事故が起きないように注意を喚起しておくことが、リスク管理の上からも必要でしょう。

自転車販売業(平成30年8月)

質問

1年間の期間を定めて雇用更新している契約社員(3年目)が、休日に事故を起こし、全治4ヶ月の重症を負いました。
契約社員就業規則には休職の規定があり、期間は3ヶ月と定められています。しかし、3ヶ月の休職期間が経過する前に現在の契約期間が満了してしまいます。
この場合、既に契約社員就業規則に定められている休職に入っているので、休職期間の定めが優先されることになるのでしょうか、それとも1年間の期間契約であるので、期間満了により契約関係は終了することになるのでしょうか?

回答

原則として、雇用契約の契約期間が優先されます。
休職制度は、雇用関係にあることが前提ですので、雇用関係が終了すれば契約社員就業規則は適用されなくなり、休職制度の適用も受けることができなくなります。
なお、既に休職に入っている場合について、特別の定めがあれば別です。
雇用契約の主旨からすれば、労務が提供できなくなった時点で、その雇用契約は成り立たなくなります。したがって、有期雇用契約終了時点で労務を提供することができない、困難であるという状態にあれば、契約を更新することは通常考えにくいでしょう。労務を提供することができる状態にないことは、雇止めの理由になります。

注意しなければならないのは、有期雇用契約であっても、複数回の更新により、「今回も当然契約更新する」ことが見込まれるような場合は、「雇用契約期間の満了により、直ちに雇用契約が終了し、契約社員就業規則の適用が無くなる」と結論付けることができない場合です。

今後は、誤解を生じることのないように、有期雇用契約者の休職規定について、「休職期間は3ヶ月とするが、その間に雇用契約満了日が到達する場合はその日までとする」といった条文を設けておくとよろしいでしょう。

食品加工業(平成30年7月)

質問

当社には自転車通勤する従業員が数名います。
各自自転車保険には加入しており、通勤距離も3キロ以内です。
労災保険の通勤災害に関しては問題ないと思いますが、その他会社として配慮しておくことがあるでしょうか?

回答

通勤に自転車を利用することについては、その従業員本人の責任になります。
ただし、「通勤は業務そのものではないが、従業員を通勤させて事業活動を行っていることから、事業者にも一定の責任(使用者責任)を認める判例(福岡地裁飯塚支部平成10年8月5日判決)があります。
よって、使用者には、従業員の安全で適正な自転車利用に責任があることを理解しておくことが重要です。
東京都では「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」を改正(平成29年2月1日施行)し、自転車通勤をする従業員がいる事業者に対し、次のような義務を定めています。
(1)自転車通勤する従業員のために事業者が駐輪場所を確保するか、その従業員が駐輪場所を確保していることを従業員に対して確認すること。(第30条)
事業者は、自転車通勤する従業員が、違法な駐輪をすることがないよう、駐輪場所を確保するか従業員自身が確保していることの確認をしなければなりません。
(2)自転車通勤する従業員に対して、自転車の安全利用のための研修の実施、情報提供等を行うこと【努力義務】。(第14条)
実施する内容は、 自転車安全利用指針を踏まえた研修の実施や、都、区市町村等が配布しているリーフレット等により交通ルール・マナーを周知することです。
(3)自転車安全利用推進者を選任すること【努力義務】。(第14条の2)
選任は、必要な知識・技能を習得した者から選ぶことになっています。
職務は、研修計画の策定、研修マニュアルの作成、自転車の安全利用に関する情報収集、ヘルメット等の安全装備に関すること(購入、配備等)などを行うことです。

繊維製造販売業(平成30年6月)

質問

商談のため、泊りがけで出張させた社員が、ホテルで入浴中、足を滑らせ転倒し、骨折してしまいました。
本人は「労災だ!」と主張していますが、出張中とはいえ、ホテル内、まして入浴中ですから、業務とは関係ないと思いますが、労災保険の適用になるのでしょうか?

回答

出張については、海外、国内、宿泊の有無を問わず、一般的には、事業主からの命令を受け、特定の用務を果たすために通常勤務している場所を離れてから戻るまでの一連の過程全般について、事業主の支配下にあると解されています。
また、出張期間中は、食事、宿泊など私的な行為を伴いますが、積極的な私用・私的な行為また恣意行為などを除き、出張に通常伴う行為として業務遂行性を認める取扱いになっています。
ご相談の出張先ホテルでの入浴中の転倒事故は、その社員の積極的な私的逸脱行為(泥酔している場合など)がある場合を除き、通常発生しうる災害であると考えられます。したがって、所轄労働基準監督署の個別具体的な判断を待つことになりますが、相談内容からは業務災害であると考えられます。

≪ご参考≫
○ 大分労基署長事件
(福岡高裁判決平成5.4.28労判648号82頁)
同僚と宿泊を伴う業務出張の際に、宿泊施設内で夕食時に飲酒し、酔って階段で転倒し、頭を強く打って死亡した事故について、「同僚と宿泊先の客室のような場所で寝食をともにするというような場合に、本件程度の飲酒は通常随伴する行為といえなくはないもので、『本件出張のような宿泊を伴う業務出張の際には、夕食時にともに飲酒をすることを常としていた』旨の供述も合わせ考えると、積極的な私的行為ないし恣意的行為に及んでいたものではない」旨を述べて、業務遂行性を認めています。

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