労務相談事例集

弊所に寄せられたご相談をピックアップしました。弊所に寄せられたご相談をピックアップしました。
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建設業(2019年7月)

質問

会社に無断で社員が休日にアルバイトをしていることが判明しました。
当社の就業規則には「会社の許可なく他に雇用されたときには、懲戒処分とする」との定めがあります。
規則に従って懲戒解雇を考えているのですが、その社員が「今は、副業・兼業をするのは自由だから、懲戒解雇はできない」と言っているのですが、本当ですか?

回答

社員は労働契約を結んでいるのですから、契約内容に従って誠実に労務を提供する義務があります。したがって、兼業をすることにより、本来の労務提供が困難になったり、企業の経営秩序を害したりする場合などは、就業規則の定めに従って懲戒解雇をすることができます。
しかし、職務の遂行に具体的な支障が生じていない場合は、懲戒解雇はできません。
兼業禁止規定に違反してアルバイトをして者に対する解雇を無効とした代表的な裁判例として、十和田運輸事件(東京地裁判決 平13.6.5)があります。『原告らが行った本件アルバイト行為の回数が年に1、2回の程度の限りで認められるにすぎないこと、原告らのこのような行為によって被告の業務に具体的に支障を来したことはなかったことから、原告らが職務専念義務に違反し、あるいは、被告との間の信頼関係を破壊したとまでいうことはできないので、本件各解雇は解雇権の濫用に当たり、無効である。』。
これに対して、解雇を有効とした代表的な裁判例として、小川建設事件(東京地裁判決 昭57.11.19)があります。『本件債権者(労働者)の兼業の職務内容は、債務者(使用者)の就業時間とは重複してはいないものの、軽労働とはいえ毎日の勤務時間は六時間に亙りかつ深夜に及ぶものであって、単なる余暇利用のアルバイトの域を越えるものであり、したがって当該兼業が債務者への労務の誠実な提供に何らかの支障をきたす蓋然性が高いものとみるのが社会一般の通念であり、事前に債務者への申告があった場合には当然に債務者の承諾が得られるとは限らないものであったことからして、本件債権者の無断二重就職行為は不問に付して然るべきものとは認められないので、解雇は有効である。』
これらの裁判例によると、ご相談の社員を解雇できるかどうは、アルバイトを行っていた頻度、アルバイトの内容、本来業務への影響などを詳しく検証する必要がありそうです。

自動車販売業(2019年6月)

質問

仕事の関係上、社員の約半数が営業職で、直行(事前申請)や直帰(電話連絡)も認めています。勤務時間は、事業場外みなし労働時間制を採用しており、所定労働時間(8時間)働いたものとみなして、残業代は支給していません。
事業場外みなし労働時間制を採用することは就業規則に定めてあります。
最近、事業場外みなし労働時間制の是非が取り沙汰されていますが、労務管理上、注意しなければならないことを教えてください。

回答

事業場外みなし労働時間制は、あくまでも「事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いとき」のみに適用されます。したがって、外出先から携帯電話で業務終了のつど上司に報告をする、業務終了後に会社へ戻った場合などは、労働時間の算定が可能なため、事業場外みなし労働時間制は適用されません。
また、具体的な指示を受けて業務を行い、帰社する場合など労働時間の算定が可能なときは事業場外みなし労働時間制の対象となりませんので、営業職のすべてに事業場外みなし労働時間制が適用されるわけではありません。
会社に戻った後に終業時刻以降も仕事を続け残業をする、終業時刻以降に会社に戻って残業をする場合など、その時間は時間外労働になりますので割増賃金の支払が必要となります。そして、みなし労働時間を10時間と決めている場合は、法定労働時間を超えた時間である2時間は時間外労働となりますので、月平均所定労働日数が20日であれば、毎月40時間(2時間×20日)の時間外労働手当を支払わなければなりません。
なお、実時間外労働時間が40時間を超える場合にはその時間に対する時間外労働手当の追加支払いも必要となります。
昨今、事業場外みなし労働が問題となっているのは、実労働時間を把握することなく所定労働時間働いたものとみなすことが、長時間労働を助長し、過労死等の健康侵害を招く恐れが多いからです。営業職の方については、日常的に所定労働時間を超えて仕事をされているようですので、健康管理の観点からも適正な実労働時間を把握し、改善措置を講じることをお勧めします。

喫茶店経営(2019年5月)

質問

弊社では、社員が少ないので、有給休暇の統一基準日を設けずに、基準日は入社日としています。
先日、社員Aから、「夏休みの予定もあるので、早く年次有給休暇の時季の指定をしてほしい。」といわれました。
2019年4月1日から法律が変わったことは知っていましたが、時季指定はいつまでにしなくてはならないのでしょうか。
社員Aは2017年8月20日に正社員として採用していますので、年次有給休暇は2019年2月20日で2.5年経過、12日残っています。

回答

労働基準法が改正され、2019年4月1日から、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対しては、次の基準日までの間(1年間)に、5日について時季を指定して取得させなければならなくなりました。
しかし、指定する時季については、労働基準法には定められておらず、厚生労働省のQ&Aでは「時季指定は基準日からの1年間の期首に限られず、当該期間の途中に行っても構わない」とされています。
また、時季を指定するに当たっては、他の社員との兼ね合いもありますので、対象となる社員とよく話し合って決めることが必要になります。
なお、時季指定として5日を超える日数を会社が指定することはできません。
社員Aさんについては、時季指定義務の対象となる年次有給休暇は2020年2月20日(法改正後に到達する基準日)に付与される14日(3.5年経過)となります。
そこで、2020年2月20日から次の基準日である2021年2月19日までの1年内に取得することができるように時季指定することになります。
社員Aさんは勘違いをされていますが、法律は施行されていますので、よく話し合って合意の上で特定の日に年次有給休暇を取得することを予定しても差し支えないでしょう。
ただし、他の社員が不公平感を持つことのないように気をつけてください。

不動産業(2019年4月)

質問

改正された労働基準法等の説明には、45時間、60時間、80時間など、いろいろな時間数が出てきます。
また、「労働時間」、「時間外労働時間」のほかに、「限度時間」、「健康管理時間」などの用語が使われています。これらの「用語」とその「時間」との関係を教えてください。

回答

36協定(時間外・休日労働協定)を締結すれば、無制限に時間外労働(残業)できることになると、「法定労働時間」を1週40時間、1日8時間と定めている趣旨に反することになります。
そこで、今回の改正で、1ヶ月45時間および1年360時間が「限度時間」として労働基準法に定められました。(1年単位の変形労働時間制により労働させる場合は、1箇月について42時間及び1年について320時間)。
臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間(休日労働含む)を超えることはできません。
また、複数月でも平均80時間(休日労働含む)が限度です(注 2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヵ月、6ヶ月の平均で、いずれにおいても80時間以内であること)。
※ この特例の適用は、1年のうち、6か月までです。
「健康管理時間」とは、研究開発業務従事者と高度プロフェッショナル制度の対象労働者の健康管理を行うために当該労働者が事業場内にいた時間と事業場外において労働した時間との合計の時間をいいます。
「面接指導対象時間」と同様に、法定労働時間を超えた一定の時間が「1月当たり80時間」とされています。
なお、この場合には、医師による面接指導を行わなければなりません。
1ヶ月に60時間を超える法定時間外労働を行わせた場合には、50%以上の割増賃金を支払う義務が大手企業には課せられていますが、中小企業でも、2023年4月1日から課せられることとなります。
労働時間の適正な把握と労働時間短縮対策の実行が求められます

製造業(2019年3月)

質問

残業を命じた従業員から、「締結した36協定の労働者代表者が退職しているので、協定は無効だ。残業させるならば、新たに代表者を選出して36協定を締結し直す必要がある。今は36協定がない状態なので、残業命令に従う必要はない」と言われました。
本当に残業をやらせてはならないのでしょうか。

回答

ご相談につきましては、「届出されている有効な36協定があること」、「届出され周知されている有効な就業規則があること」、「就業規則に、時間外労働を命じることができること、正当な理由なくして命令を拒否できないことが規定されていること」が整っているのであれば、適法に残業を命じることができます。
36協定、または就業規則のいずれかだけでは適法な残業を命じることができませんので注意してください。

36協定の効力要件
「事業場の労働者の過半数を代表する【※過半数代表者の選任が妥当でない場合は協定無効】」という協定当事者の要件は、協定成立時の要件であり、協定の存続要件ではありません。したがって、成立後に代表者が退職しても36協定の効力には影響しません。

残業命令の根拠
時間外労働を命じることができる根拠は、就業規則、または労働契約に、一定の業務上の事由があれば労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨が定められていることにあります。したがって、就業規則にその旨の規定があるならば時間外労働を命じることができます。

残業命令拒否に対する懲戒
残業命令の拒否は労働契約上の義務違反ということになり、懲戒処分の対処になります。
しかし、労基法第36条に基づく時間外・休日労働は、同法第32条の例外として許容しているものですから、通常の労働時間に対する義務とは性格を異にするものです。したがって、懲戒処分としての種類は、それ相当に軽微なものでなければならない、と解されています。

介護施設運営(2019年2月)

質問

労働基準法が改正されましたが、それぞれの施行期日とその罰則を教えてください。

回答

改正条項のほとんどが平成31年4月1日からの施行となり、罰則は適用されるものとされないものがあります。

●3ヶ月フレックスタイム制
 施行期日 平成31年4月1日
 罰  則 労使協定の届出違反 30万円以下の罰金

●時間外労働の上限規制に係る規定
 施行期日 平成31年4月1日
 罰  則 上限時間(80時間、100時間)違反 
 6ヶ月以下の懲役又は30円以下の罰金
 経過措置 中小事業主は平成32年4月1日から適用
 適用除外 新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務
 適用猶予 工作物の建設等の事業、自動車の運転の業務、医業に従事する医師等
 ※平成36年4月1日から適用

●年次有給休暇
 施行期日 平成31年4月1日
 罰  則 年5日以上取得させなかった使用者に対して、対象1名につき30万円以下の罰金

●割増賃金率の適用
 施行期日 中小事業主は平成 35 年4月1日から適用
 罰  則 6ヶ月以下の懲役又は30円以下の罰金

●労働基準法施行規則の見直し
 施行期日 平成31年4月1日
  ⑴ 労働条件の明示    → 真実を明示すること
  ⑵ 労働条件の明示の方法 → 希望によりmail可
  ⑶ 過半数代表者関係   → 民主的な選出に限る

金属部品製造業(H30年2月)

質問

弊社では、ほぼ毎月残業が発生しますので、残業の多い月と少ない月を平均した額を計算し固定残業代として毎月支払っています。
先日、残業時間数などの内訳を明示しないと、これまでのような支払方ができなくなると聞いたのですが、本当でしょうか?

回答

固定残業制を続ける場合は、基本給の額とは別に実際の残業時間数と残業代の計算方法とその金額を明示することが必要です。
例えば、【月給30万円(時間外手当込み)】という文言は、「固定残業代」と「基本給等の額」が区別されていないので不適切となり、【月給25万円、時間外手当5万円】というのも、「基本給等の額」は区別されていますが、「固定残業代」としている5万円の計算根拠となる残業時間数や1時間当たりの賃金額が明記されていないので、これも不適切となります。
「1時間当たりの賃金」は、1ヶ月の平均所定労働時間{(365日-1年間の所定休日日数)×(1日の所定労働時間)}÷12を分母として(月給+各種手当)を割ります。
「残業時間数」は、タイムカードなどにより適切に把握し、固定残業代の基礎となっている労働時間数を超えて残業をした場合は、追加の割増賃金を支払う必要がありますし、その旨を明記しなければなりません。
近年、募集要項や求人票の「固定残業代」を含めた賃金表示をめぐるトラブルが多発しているため、青少年が応募する可能性のある募集または求人について、指針は「固定残業代」に関する適切な表示をするよう定めています。法令に従った適正な管理と計算をすることが労務管理の基本です。

各種認定資格等