労務相談事例集
弊所に寄せられたご相談をピックアップしました。弊所に寄せられたご相談をピックアップしました。
解決方法も併せてご覧いただき、御社の「困った!」を是非ご相談ください。 ※メールや電話相談だけのご契約も可能です。
ご相談はお電話またはお問合せフォームからどうぞ。
旅行業(2023年11月)
- 質問
ここ数年で業績が上がっており、中堅社員も定着傾向にあるので、来年から新卒社員を採用しようかと考えています。
15年前に新卒求人を出したことがありますが、現在の新卒求人において、何か注意すべきことはありますか?- 回答
新規学校卒業段階でのミスマッチによる早期離職を解消し、若者が充実した職業人生を歩んでいくため、労働条件を的確に伝えることに加えて、若者雇用促進法において、平均勤続年数や研修の有無および内容といった就労実態等の職場情報も併せて提供することとなっています。
◆ 青少年雇用情報の提供(若者雇用促進法14条)
(1)幅広い職場情報の提供(努力義務)
学校卒業見込者等求人の申込みに当たり、その申込みに 係る公共職業安定所、特定地方公共団体または職業紹介事業者に対し、青少年雇用情報を提供するように努めなければなりません。
(2)応募者等・ハローワーク・職業紹介事業者等・求人の 紹介を受けた者等から求めがあった場合は、情報提供項目(下表)の(ア)~(ウ)の3類型それぞれについて1つ以上の情報を提供しなければなりません。(義務)(ア)募集・採用に関する状況
過去3年間の新卒採用者数・離職者数
過去3年間の新卒採用数の男女別人数
平均勤続年数
(ア)の参考地として、可能であれば平均年齢についても情報提供してください。(イ)職業能力の開発・工場に関する状況
検収の有無および内容
自己啓発支援の有無および内容
メンター制度の有無
キャリアコンサルティング制度の有無および内容
社内検定等の制度の有無および内容(ウ)企業における雇用管理に関する状況
前年度の月平均所定労働時間の実績
前年度の有給休暇の平均取得日数
前年度の育児休業取得対象者数・取得数(男女別)
役員に締める女性の割合および管理的地位にあるものに占める女性の割合公表の方法は、ホームページでの公表、会社説明会での提供、求人票への記載などによる、自主的・積極的な情報提供。また、応募者等から個別の求めがあった場合は、メールまたは書面による情報提供という方法となります
卸売業(2023年10月)
- 質問
当社は、一部の部署でフレックスタイム制を導入しているのですが、振替休日の要件の一つに、「振り替える休日は、土曜日を起算日とした、週休二日制が確保される範囲のできるだけ接近した日とする。」と就業規則に定義しています。
そもそも、フレックスタイム制は、月の清算時間を定めて勤務させる制度ですので、この要件は建前的なもので、従業員が月の清算時間を勤務すれば、この要件を満たさなくても問題ないと思いますが、間違いでしょうか?- 回答
フレックスタイム制と休日制は別の問題となります。
フレックスタイム制においても、法定休日は法35条の原則どおり、週1日(または起算日を決めて4週のうちに4日)与えなければなりません。このことは、フレックスタイムにおいても適用除外とされておらず、同一週に振替休日がなく、法定休日労働に該当する場合は休日労働という扱いになり、フレックスタイム制における通常の実労働時間とは別に、労働時間管理や割増賃金の支払いなどが必要になります。
一方、所定休日の取り扱いについては、御社の規則にその定めがあれば、それに従うことになります。
「振り替える休日は、土曜日を起算日とした、週休二日制が確保される範囲のできるだけ接近した日とする。」と定めておられる場合は、フレックスタイム制の従業員も例外ではありません。
例外とされる場合には、規則や賃金規程の見直しが必要ですが、他の従業員との公平性を保つことを忘れないようにしてください。
サービス業(2023年9月)
- 質問
先日、アルバイトの入社があったので雇用保険の資格取得手続をしました。
被保険者は女性で、過去結婚していましたが最近離婚し、現在は旧姓を名乗っています。
入社時に提出された被保険者証は結婚前に勤めていた会社のものでした。
直近(離婚直前)まで勤めていた企業でも同じ番号で加入していたそうなので、この被保険者番号で資格取得手続したところ、前職不明として新しく被保険者番号が付番されてしまいました。
番号の入力ミスはありませんが、どうしてでしょうか。- 回答
令和5年6月12日以降、雇用保険の電子申請手続ではエラーチェック機能が追加されています。
https://shinsei.e-gov.go.jp/contents/news/mhlw/2023-06-07t0948040900_1368.html
手続きの自動化を図り、処理の簡略化を目指すためのものですが、その弊害として、以下に挙げた個人情報間に少しでも相違があるとエラーで即返戻になり、しかも相違の内容については通知が行われない仕様になりました。・マイナンバーに登録されている現在の個人情報
・雇用保険に登録されている個人情報
・手続時に申し出ている個人情報今回の場合は、雇用保険のデータベース上で登録されていた姓に相違があったと考えられます。直近の勤務先では婚姻後の姓で雇用保険に加入していて、離婚直前に退職したため、データベース上は氏名変更が行われていません。
資格取得時に当該アルバイトの離婚前の氏名と現氏名を連記されないと、旧姓のみの情報で電子申請を行うことになるので、雇用保険番号に登録された氏名と申し出た氏名が相違となり、返戻となったものと思います。
こうした事態を回避するために、姓の変更情報は必ず本人に確認し、申請するようにいたしましょう。
なお、不要な付番が行われた場合でも、過去の番号と新番号は統合できますのでご安心ください。
金融業(2023年8月)
- 質問
コロナ禍において家族の介護が必要になり、現在に至るまで実家でのリモートワークで業務に従事している社員がいます。月に一度、業務都合でオフィスに出社させてましたが、実家は遠方であるため飛行機を利用しているとのことです。
(※会社に住所変更届は提出していない。東京滞在時は以前から借りている東京のアパートから出社している)家族の介護は本人都合ですので、これまで飛行機のチケット代については職員が自己負担していましたが、今後は月に数度出社しなければならなくなります。
それを職員に伝えたところ、「半額でもいいのでチケット代を負担してもらいたい」という要望が出ています。会社は負担しなくてはならないのでしょうか。
また、仮に支払う場合、この飛行機代は通勤に使用していると考え、非課税で支給してよいでしょうか。- 回答
航空料金の支払義務はありませんが、御社が特別に支払う場合は、他の社員との均衡を保つことを考慮しつつ、支払うことも可能です。ただし、実家から東京のオフィスに飛行機を利用して出社することは、「通勤」には該当しないため、非課税支給とすることはできません。
会社は当該社員を雇用する際、オフィス近郊にある自宅から公共交通機関を利用して毎日出社して勤務することを前提としていますが、現在の勤務状況は、コロナ禍を経てリモートワークに対する理解が広まり、また家族の介護という致し方ない事情が相まって容認されているだけです。
あくまでも本人都合によるものですので、本来は、特別な配慮は必要ありませんが、それを支払う場合には、課税処理が必要となります。
なお、東京滞在時のアパートからオフィスに「通勤」する際の費用は、非課税の通勤手当となります。
今後、介護が長期化するような場合は、オフィスへの出社を前提とした現在の雇用条件を見直す、という方法もあります。
大事なことは、毎日出勤している他の社員との公平性を維持するためにどうすべきか、を検討することではないでしょうか。
倉庫業(2023年7月)
- 質問
6月に、会社で使用しているクラウド型の給与システムがサイバー攻撃を受けました。システムの復旧を待っていましたが、給与計算の締め切りに間に合わないため、6月給与では残業代の計算は行わず、7月給与でまとめて計算支給しました。
6月は算定基礎届に関係する月ですが、この対応は算定に影響するでしょうか。- 回答
御社の算定は、4月と5月の2ヶ月で申告することになります。
会社全体で6月給与では残業代支給が行わ
れなかったことになり、給与の遅配に該当するためです。労働者本人が残業の申請をし忘れていて残業代の支給が出来なかった、或いは給与改定が行われた従業員の基本給額を給与計算担当者が反映し忘れた、または改定が行われた時期が給与計算の締め切り後で反映しようがなかった等の理由で、本来支払うべき月に支払われなかった給与の差額をその翌月以降に支払うことを「遡及」といいます。
これらの場合、支給が遅れた原因は従業員や給与計算担当者の本人都合である場合が多く、会社都合で支給が遅れたわけではありません。
ご相談の事案は、当該システムを使用していた企業の都合で、6月は全従業員に対する残業代支給を行わなかったことになり、「遡及」ではなく「遅配」として処理をする必要があります。
算定対象期間中に給与遅配があった場合、その月は除いて計算するルールとなっています。
宿泊業(2023年6月)
- 質問
先日、外国籍の社員が入社しました。母国では同性婚が認められているそうで、同性のパートナーも一緒に来日し、同居しています。本人は「パートナー=家族」と認識していますが、住民票上の続柄は「同居人」と記載されています。
このパートナーは健康保険の被扶養者となれるのでしょうか。
また、元々在籍している社員(男性)が近々事実婚をする予定です。籍を入れる予定はないそうですが、内縁の妻には子がいて、この子供については社員の被扶養者としたいそうです。ただ、この子供の続柄も「同居人」になっていました。
内縁の妻の子は継子と同じ扱いではなかったでしょうか。- 回答
続柄(つづきがら)とは、血縁関係あるいは婚姻関係を指す語です。また婚姻とは、配偶者と呼ばれる人との間の、文化的、若しくは法的に認められた繋がりの事で、配偶者同士、その子との間に権利と義務を確立する行為の事を指します。
2023年6月26日現在、日本における「婚姻」は生物学的な男性と女性が配偶関係を結ぶことを指すため、生物学的に同性であるパートナーは婚姻関係にあるとは認められません。よって、家族あるいは配偶者と認めることができないため、当該パートナーは(日本においては)扶養義務がない人物となり、健康保険の被扶養者にはなれません。
一方、事実婚をした内縁の妻のケースは、同一住所に転入をしてその手続きをする際に、世帯分離をするか同一世帯にするかを選択できます。
いわゆる「同棲」をしているカップルの場合、世帯分離をして同一住所に居住する別世帯としておくのが一般的ですが、内縁関係とする場合は、同一世帯にして続柄を未届けの妻(夫)と届け出る場合が多いようです。しかし、ご質問者の社員の方は、この「未届けの妻」として届け出るべきシーンで誤って「同居人」として届け出ていることによって、その子の続柄が同居人になっている可能性があります。
被扶養としたい場合は、配偶者を「未届けの妻」、その子を「未届けの妻の子」とすることで扶養義務が生じ、継子と同じ扱いになり、被扶養者として申請することができますので、お住いの地区の役所にご相談ください。
小売業(2022年11月)
- 質問
従業員が結婚をしたことに伴い、健康保険被保険者証が新たに交付されました。
現在はマイナンバーと健康保険の情報が紐づいているとのことで、従業員が住民票上の氏名変更手続きを行えば、追って健康保険被保険者証が会社宛に郵送される(現在は協会けんぽのみ)ようになっているそうです。
しかし、この従業員には前夫との間の子供(10歳)がいますが、送付された子供の健康保険被保険者証に印字されている姓は旧姓のままで、被保険者の姓のみが変更されていました。
この健康保険被保険者証は使用できるのでしょうか?- 回答
現在、市区町村で行われた氏名変更手続情報はマイナンバーに登録され、マイナンバーを介して基礎年金番号を管理している日本年金機構にもその情報が共有されています。
毎月ある時期になると変更情報が日本年金機構に一斉に共有され、年金機構は基礎年金番号を媒介にそれらを受信し、基礎年金番号に登録された氏名情報を更新することで氏名変更者を抽出することができるようになりました。
さらに、その情報を協会けんぽと共有することで、変更者のみ被保険者証の自動交付を行う仕組となっています。日本年金機構が管理しているのは、あくまで基礎年金番号ですので、被保険者(基礎年金番号を把握している人)の変更情報は自ら把握できるのですが、被扶養者については配偶者以外は提出の必要がないため、被扶養者の氏名変更情報は受信することができません。
特に今回の場合はお子様が10歳とのことで、基礎年金番号自体が付番されていませんから、被扶養者の氏名変更は行われず、旧姓のままの発行となったものと思われます。
この場合は、被扶養者異動届により、お子様の氏名変更手続を行いますので、交付されたお子様の健康保険被保険者証を弊所にご郵送ください。
ガソリンスタンド(2021年12月)
- 質問
当社のアルバイトが兼業先の企業において業務上被災し、休業することになりました。
そのアルバイトは、このことが原因で当社を退職したのですが、先日、負傷日前直近3ヶ月の賃金額等の証明依頼がありました。
当社で被災したわけではありませんので、証明しなくてもよいでしょうか。- 回答
複数の会社で働いている労働者の方については、働いているすべての会社の賃金額を基に保険給付が行われないこと、すべての会社の業務上の負荷(労働時間やストレス等)を合わせて評価して労災認定されないことが課題となっていました。
このため、多様な働き方を選択する方やパート労働者等で複数就業している方が増えているなど、副業・兼業を取り巻く状況の変化を踏まえ、複数事業労働者の方が安心して働くことができるような環境を整備する観点から、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)が2020年9月に改正されました。
これにより、①複数事業労働者の業務上の事由、②複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由または、③通勤による負傷等における保険給付の給付基礎日額は、事業ごとに合算となりました。
複数事業労働者とは、事業主が同一人でない2以上の事業に使用される労働者(法1条)ですが、保険給付の対象には、複数事業労働者に「類する者」(法7条1項2号)も含みます。
「類する者」とは、負傷等の原因または要因となる事由が生じた時点で2以上の事業に同時に使用されていた労働者(労災則5条)をいい、算定事由発生日に2以上の事業に使用されていない者(令2・8・21基発0821第2号)が該当します。
傷病等の原因または要因となる事由が生じた時期に複数就業していれば、既にいずれかの事業を退職していても、賃金合算の対象になるとしていますので、御社の賃金額等の証明が必要となります。
金属部品製造業(H30年2月)
- 質問
弊社では、ほぼ毎月残業が発生しますので、残業の多い月と少ない月を平均した額を計算し固定残業代として毎月支払っています。
先日、残業時間数などの内訳を明示しないと、これまでのような支払方ができなくなると聞いたのですが、本当でしょうか?- 回答
固定残業制を続ける場合は、基本給の額とは別に実際の残業時間数と残業代の計算方法とその金額を明示することが必要です。
例えば、【月給30万円(時間外手当込み)】という文言は、「固定残業代」と「基本給等の額」が区別されていないので不適切となり、【月給25万円、時間外手当5万円】というのも、「基本給等の額」は区別されていますが、「固定残業代」としている5万円の計算根拠となる残業時間数や1時間当たりの賃金額が明記されていないので、これも不適切となります。
「1時間当たりの賃金」は、1ヶ月の平均所定労働時間{(365日-1年間の所定休日日数)×(1日の所定労働時間)}÷12を分母として(月給+各種手当)を割ります。
「残業時間数」は、タイムカードなどにより適切に把握し、固定残業代の基礎となっている労働時間数を超えて残業をした場合は、追加の割増賃金を支払う必要がありますし、その旨を明記しなければなりません。
近年、募集要項や求人票の「固定残業代」を含めた賃金表示をめぐるトラブルが多発しているため、青少年が応募する可能性のある募集または求人について、指針は「固定残業代」に関する適切な表示をするよう定めています。法令に従った適正な管理と計算をすることが労務管理の基本です。