事務所だより 2024年5月号
なくならないハラスメントを考える!
資料出所:厚生労働省
加害者に自覚がない !
各企業ではハラスメント防止のための研修を行い、防止規程を作成するなど、さまざな対策に取り組んでいます。しかし、一向にハラスメント問題は消失しません。社風や労務管理に問題があることもその一因ですが、そもそも加害者とされる人が「ハラスメント行為になっていることを自覚してない」ことが一番の原因ではないでしょうか。
企業がハラスメントをなくそうと、どれだけ頑張っていても「自分の行為はハラスメントではない」という認識、自覚がないのでは、話になりません。
「もしも、自分が加害者として訴えられたら…」と考える人は、研修内容も身につきますが、「最初から自分じゃない」と考えている人は、何も残らない、ということにならないように、全社員が自身のハラスメント
防止となる(加害者とならない)ような判例等をご紹介いたします。
判例の詳細は、「あかるい職場応援団」のサイトをご参照ください。
メールの内容が侮辱的言辞 ?
事案の概要
Xは、A社のBサービスセンター(SC)で勤務するところ、その上司である、Yが、Xに対し「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います」などと記載された電子メールを、Xとその職場の同僚に送信した。Xはこのメール送信が、不法行為に当たるとして、損害賠償を求め、訴えを提起した。
判決のポイント抜粋
本件メール中には、「やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います。当SCにとっても、会社にとっても損失そのものです。」という、退職勧告とも、会社にとって不必要な人間であるとも受け取られるおそれのある表現が盛り込まれており、これがX本人のみならず同じ職場の従業員十数名にも送信されている。この表現は、「あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。あなたの仕事なら業務職でも数倍の実績を挙げますよ。……これ以上、当SCに迷惑をかけないで下さい。」という、人の気持ちを逆撫でする侮辱的言辞と受け取られても仕方のない記載などの他の部分ともあいまって、控訴人の名誉感情をいたずらに毀損するものであることは明らかであり、上記送信目的が正当であったとしても、その表現において許容限度を超え、著しく相当性を欠くものであって、控訴人に対する不法行為を構成する。
上司から部下に対するメールが、不法行為となり損害賠償が認められる場合があります。
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