事務所だより 2019年8月号
これからの兼業・副業を考える!?
二重就業禁止の理由 … ?!
二重就業については、多くの会社で就業規則に「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」を禁止事項に定め、その違反を懲戒事由としているのが一般的です。
そして兼業を禁止する一般的な理由を以下のとおりであり、懲戒事由に「兼業の禁止を定めること」には合理性があるとされています。
① 労務の提供の問題(他社で就労することにより肉体的精神的に疲労し、自社での誠実な労務提供に悪影響を及ぼすなど。)
② 健康管理上の問題(長時間労働、深夜労働により疲労が蓄積するため、健康障害のおそれがある、安全作業のため集中力がおろそかになるなど。)
③ 企業秩序の問題(遅刻や欠勤を招くおそれ、他社での利益相反行為のおそれ、企業情報の漏えいのリスクなど。)にあります。
一方、労働契約で定められた労働時間以外は、本来労働者にとって自由な時間であるはずです。そこで、兼業禁止の理由となっている上記の問題について、疲労の程度が軽い、健康障害の生じるおそれは少ない、利益相反行為がない、などの本来の労務提供を困難にする事情がない、企業の経営秩序を乱したりすることがない、などの場合は就業規則に規定があったとしても、懲戒処分を行うことは認められないと考えられます。
判例 『橋元運輸事件』(名古屋地裁 昭和47年04月28日)
「元来、就業規則において二重就職が禁止されている趣旨は、従業員が二重就職することによって、会社の企業秩序をみだし、又はみだすおそれが大であり、あるいは従業員の会社に対する労務提供が不能若しくは困難になることを防止するにあると解され、従って右規則にいう二重就職とは、右に述べたような実質を有するものをいい、会社の企業秩序に影響せず、会社に対する労務の提供に格別の支障を生ぜしめない程度のものは含まれないと解するのが相当である。」
兼業と副業の違い ?
日本語の意味しての違いはありませんが、現実的な解釈としては、雇用契約を複数の会社と結んだり、会社員でありながら他の企業の役員に就任したりするのが「兼業」で、会社に属しながら、他社と雇用関係を有することなく、副収入を得るものが「副業」と考えられます。
・・・次のページへつづく