労務相談事例集
弊所に寄せられたご相談をピックアップしました。弊所に寄せられたご相談をピックアップしました。
解決方法も併せてご覧いただき、御社の「困った!」を是非ご相談ください。 ※メールや電話相談だけのご契約も可能です。
ご相談はお電話またはお問合せフォームからどうぞ。
2つの会社で勤務する者の社会保険?!(2025年4月)
- 質問
従業員からの要望により、今年から副業を認めることにいたしました。早速、従業員から「実家が旅館を経営しており、家業を継ぐ準備のために役員として兼務したい」という相談がありました。
当社での仕事がメインになる約束なので、社会保険は当社で加入していれば問題ないでしょうか。【IT業】- 回答
同時に2か所以上の事業所で勤務する場合、それぞれの事業所ごとに社会保険の加入要件を満たしているかどうかを確認する必要があり、いずれの事業所でも加入要件を満たした場合、両方の事業所で社会保険に加入することになります。
ご相談のケースでは、従業員が役員報酬を受けるか、常態として経営に参画しているかがポイントとなります。これらの条件を踏まえて、加入要件を満たす場合は、両方の事業所で社会保険に加入することになります。
同時に複数の事業所で社会保険の加入要件を満たした場合は、資格取得手続きとあわせて、いずれか1つの事業所を主たる事業所として選択する届を提出します。そして、選択した事業所の管轄となる年金事務所、健康保険の保険者が登録などの事務手続を行います。
保険料はそれぞれの事業所から受ける報酬月額を按分(あんぶん)し算出します。参考:日本年金機構
「兼業・副業等により2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20131022.files/2kashoijyokinmu.pdf
解雇と退職勧奨の違い!?(2025年2月)
- 質問
定年(65歳)間近の社員が自身の病気により高所作業を行うことができなくなりました。本来は、高所作業がない他の業務に転換させるべきなのでしょうが、当社は小規模の建設業ですので、それができません。
そこで、定年前ではありますが、円満に退職してもらいたいと考えており、退職勧奨と解雇の違いを教えてください。
また、その注意点を教えてください。【建設業】- 回答
解雇とは、会社が労働者に対し一方的に労働契約を解除するものです。
一方、退職勧奨とは、会社が労働者に対し退職を促し、労働者の自由な意思で労働契約を解除するものです。
解雇は会社の一方的な行為ですが、退職勧奨は会社が退職を勧めつつも最終的には労働者の意思で退職するものなので、そこに大きな違いがあります。
解雇するには30日以上前に予告をするか、30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。また、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められなければなりません。
退職勧奨は、法律上の要件はありません。注意しなければならないことは、退職の意思がないと示しているにもかかわらず長時間にわたり面談をしたり、繰り返し退職を迫ったり、人格を否定するような発言をしないことです。また退職勧奨に応じない場合は解雇することはできません。
退職勧奨は労働者の合意が前提ですので、解雇に比べるとトラブルは少ないですが、前述のようにしつこく退職勧奨を行うとハラスメントになることもあります。退職勧奨は解雇するだけの理由が少ない場合に実施されることがほとんどです。また交渉の条件を提示するケースが一般的です。例えば、定年間近ということなので、退職金は定年時まで就労したとものとみなし支払うことや、定年までの賃金数か月分を上乗せすることなどが考えられます。なお、基準となるものはありませんので、あくまでも会社の判断になります。
いずれにしても、まずは解雇を回避する方法を模索する必要があります。
清掃や資材の管理、運転業務など、定年までの勤務継続を検討してみましょう。
それでも難しければ、丁寧に会社の事情を説明し、社員に納得してもらうことが重要です。
永年勤続表彰の取扱い!?(2025年1月)
- 質問
当社は、永年勤続表彰として、勤続10年の従業員に3万円、勤続20年は6万円の金一封を贈呈しています。福利厚生費の扱いで、恩恵的なものなので報酬には該当しないものとしていますが、賞与の扱いをしている会社もあると聞きます。賞与として社会保険料を控除するべきでしょうか。【製造業】
- 回答
健康保険法第3条第5項及び第6項(厚生年金保険法第3条第1項第3号及び第4号)において、「報酬」及び「賞与」(以下「報酬等」という。)は「労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」と規定されており、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計に充てられるすべてのものを包含するとされています。一方、恩恵的に支給するものは、報酬等の対象とならないとされています。
日本年金機構から令和5年6月に公表された事務連絡「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」によると、「長期勤続者に対して支給する金銭、金券又は記念品等(以下「永年勤続表彰金」という。)は、「報酬等」に含まれるか。」の問いに対して、次のような回答がありました。
(答) 永年勤続表彰金については、企業により様々な形態で支給されるため、その取扱いについては、名称等で判断するのではなく、その内容に基づき判断を行う必要があるが、少なくとも以下の要件を全て満たすような支給形態であれば、恩恵的に支給されるものとして、原則として「報酬等」に該当しない。ただし、当該要件を一つでも満たさないことをもって、直ちに「報酬等」と判断するのではなく、事業所に対し、当該永年勤続表彰金の性質について十分確認した上で、総合的に判断すること。
■永年勤続表彰金における判断要件
①表彰の目的:企業の福利厚生施策、または長期勤続の奨励策として実施するもの
なお、支給に併せてリフレッシュ休暇が付与されるような場合は、より福利厚生としての側面が強いと判断される
②表彰の基準:勤続年数のみを要件として一律に支給されるもの
③支給の形態:社会通念上いわゆるお祝い金の範囲を超えていないものであって、表彰の間隔が概ね5年以上のもの
離職票1月20日から離職者のマイナポータルに直接送付?!(2024年12月)
- 質問
2025年1月20日から交付される離職票が離職者のマイナポータルに直接送付されるようになると聞きました。事業所は何をしたらよいでしょうか。
【通信業】- 回答
厚生労働省の情報によると2025年1月20日から交付(離職日ではなく交付日)される離職票のほか、資格喪失確認通知書および雇用保険被保険者期間等証明票について、下記の条件を満たす希望する離職者に対して事業所を通さずマイナポータルに直接送付されます。
• 届け出たマイナンバーが被保険者番号と適切に紐付いていること
• 離職者自身がマイナポータルと雇用保険WEBサービスの連携設定を行っていること
• 電子申請で雇用保険の離職手続きを行っていること離職証明書などの事業所控は、今まで通り事業所へ交付されますので、事業所から離職者へ書類を送付する手間がなくなるメリットがあります。
事業所は事前に離職者の雇用保険被保険者番号にマイナンバーを登録しておくことが必要です。申請から登録まで期間を要するため、遅くとも離職票申請の2週間以上前までに登録申請を行ってください。
マイナポータルと雇用保険WEBサービスの連携設定などの詳細は、厚生労働省HPのリーフレットをご参照ください。
・被保険者用案内 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001353163.pdf
・事業所用案内 https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001353550.pdf
(2024年12月時点)>>>>>
【続報】2025年1月 厚生労働省より「マイナポータルを利用した離職票の受け取りFAQ」が公開されました
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001367146.pdf
小売業(2022年11月)
- 質問
従業員が結婚をしたことに伴い、健康保険被保険者証が新たに交付されました。
現在はマイナンバーと健康保険の情報が紐づいているとのことで、従業員が住民票上の氏名変更手続きを行えば、追って健康保険被保険者証が会社宛に郵送される(現在は協会けんぽのみ)ようになっているそうです。
しかし、この従業員には前夫との間の子供(10歳)がいますが、送付された子供の健康保険被保険者証に印字されている姓は旧姓のままで、被保険者の姓のみが変更されていました。
この健康保険被保険者証は使用できるのでしょうか?- 回答
現在、市区町村で行われた氏名変更手続情報はマイナンバーに登録され、マイナンバーを介して基礎年金番号を管理している日本年金機構にもその情報が共有されています。
毎月ある時期になると変更情報が日本年金機構に一斉に共有され、年金機構は基礎年金番号を媒介にそれらを受信し、基礎年金番号に登録された氏名情報を更新することで氏名変更者を抽出することができるようになりました。
さらに、その情報を協会けんぽと共有することで、変更者のみ被保険者証の自動交付を行う仕組となっています。日本年金機構が管理しているのは、あくまで基礎年金番号ですので、被保険者(基礎年金番号を把握している人)の変更情報は自ら把握できるのですが、被扶養者については配偶者以外は提出の必要がないため、被扶養者の氏名変更情報は受信することができません。
特に今回の場合はお子様が10歳とのことで、基礎年金番号自体が付番されていませんから、被扶養者の氏名変更は行われず、旧姓のままの発行となったものと思われます。
この場合は、被扶養者異動届により、お子様の氏名変更手続を行いますので、交付されたお子様の健康保険被保険者証を弊所にご郵送ください。
ガソリンスタンド(2021年12月)
- 質問
当社のアルバイトが兼業先の企業において業務上被災し、休業することになりました。
そのアルバイトは、このことが原因で当社を退職したのですが、先日、負傷日前直近3ヶ月の賃金額等の証明依頼がありました。
当社で被災したわけではありませんので、証明しなくてもよいでしょうか。- 回答
複数の会社で働いている労働者の方については、働いているすべての会社の賃金額を基に保険給付が行われないこと、すべての会社の業務上の負荷(労働時間やストレス等)を合わせて評価して労災認定されないことが課題となっていました。
このため、多様な働き方を選択する方やパート労働者等で複数就業している方が増えているなど、副業・兼業を取り巻く状況の変化を踏まえ、複数事業労働者の方が安心して働くことができるような環境を整備する観点から、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)が2020年9月に改正されました。
これにより、①複数事業労働者の業務上の事由、②複数事業労働者の2以上の事業の業務を要因とする事由または、③通勤による負傷等における保険給付の給付基礎日額は、事業ごとに合算となりました。
複数事業労働者とは、事業主が同一人でない2以上の事業に使用される労働者(法1条)ですが、保険給付の対象には、複数事業労働者に「類する者」(法7条1項2号)も含みます。
「類する者」とは、負傷等の原因または要因となる事由が生じた時点で2以上の事業に同時に使用されていた労働者(労災則5条)をいい、算定事由発生日に2以上の事業に使用されていない者(令2・8・21基発0821第2号)が該当します。
傷病等の原因または要因となる事由が生じた時期に複数就業していれば、既にいずれかの事業を退職していても、賃金合算の対象になるとしていますので、御社の賃金額等の証明が必要となります。
金属部品製造業(H30年2月)
- 質問
弊社では、ほぼ毎月残業が発生しますので、残業の多い月と少ない月を平均した額を計算し固定残業代として毎月支払っています。
先日、残業時間数などの内訳を明示しないと、これまでのような支払方ができなくなると聞いたのですが、本当でしょうか?- 回答
固定残業制を続ける場合は、基本給の額とは別に実際の残業時間数と残業代の計算方法とその金額を明示することが必要です。
例えば、【月給30万円(時間外手当込み)】という文言は、「固定残業代」と「基本給等の額」が区別されていないので不適切となり、【月給25万円、時間外手当5万円】というのも、「基本給等の額」は区別されていますが、「固定残業代」としている5万円の計算根拠となる残業時間数や1時間当たりの賃金額が明記されていないので、これも不適切となります。
「1時間当たりの賃金」は、1ヶ月の平均所定労働時間{(365日-1年間の所定休日日数)×(1日の所定労働時間)}÷12を分母として(月給+各種手当)を割ります。
「残業時間数」は、タイムカードなどにより適切に把握し、固定残業代の基礎となっている労働時間数を超えて残業をした場合は、追加の割増賃金を支払う必要がありますし、その旨を明記しなければなりません。
近年、募集要項や求人票の「固定残業代」を含めた賃金表示をめぐるトラブルが多発しているため、青少年が応募する可能性のある募集または求人について、指針は「固定残業代」に関する適切な表示をするよう定めています。法令に従った適正な管理と計算をすることが労務管理の基本です。