事務所だより 2026年10月号
労働基準監督署の監督指導事例と今後の方針について
厚生労働省は、長時間労働や賃金不払いが疑われる事業場に対して、労働基準監督署(以下労基署)が実施した監督指導の結果を取りまとめ、是正事例や送検事例を公表しています。今号は厚生労働省が公表した事例の紹介と、今後の監督指導の方針などについて記載します。
1.労働基準監督署の監督指導事例
長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導は、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80 時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場を対象としています。
【事例1】厚生労働省:長時間労働が疑われる事業場に対する令和6年度の監督指導結果
立入調査で把握した事実
・労働者1人について、36協定で定めた上限時間(月75時間)を超え、かつ労働基準法に定められた時間外・休日労働の上限(月100時間未満、複数月平均80時間以内)を超える、最長で1か月当たり127時間の違法な時間外・休日労働が認められた。
・勤怠管理システム上の残業申請の時間と、出社・退社時に行うICカードの打刻記録との間に、長い者で1日当たり3時間程度の乖離が発生しているものの、その時間数や理由を確認していない状況が認められた。
労基署の指導
・36協定で定めた上限時間を超えて時間外労働を行わせたことについて是正勧告(労働基準法第32条違反)
・労働基準法に定められた上限時間を超えて時間外・休日労働を行わせたことについて是正勧告
(労働基準法第36条第6項違反)
・時間外・休日労働時間を上限時間以内とするための具体的方策を検討・実施するよう指導・労働時間を適正に把握するための具体的方策を検討・実施することを指導
・過去に遡って労働者に事実関係の聞き取りなど時間外・休日労働の実態調査を行い、調査の結果、差額の割増賃金の支払が必要になる場合は、追加で当該差額を支払うことを指導
是正の取り組み
・全社員が参加する創立記念式典の際に、社長から労基署の指導について共有
・時間外・休日労働の削減に向け、人事部署が全社員の労働時間を随時確認し、36協定の上限時間を超えるおそれがある場合は、管理者に時間外労働の中止を通告する運用を開始
・残業申請時間とICカードの打刻に乖離がある労働者に対し、実態調査を実施。事前に申請した残業予定を超えた場合、超過分の残業申請がしづらい状況があったため、実績を正しく申請し、管理者は実績で確認することを改めて徹底。また、実態調査の結果、特定された労働時間に基づき、割増賃金の遡及払いを実施
次頁へつづく・・・